資金ショートを防ぐためのキャッシュフロー管理の基本と実践法【Excel資金繰り管理表無料配布】

はじめに:資金の流れ

忙しい毎日を送る中で、資金の管理にまで頭を回すのは大変です。
「売上も利益も順調なのに、なぜか手元の現金が足りない…」
そんな経験はありませんか?

会社のお金の流れを理解し、うまく回していくことが、安心経営のカギとなります。

この記事では、キャッシュフロー管理の基本とすぐに実践できる方法をご紹介します。

資金の流れはどうなっている?

まず、会社のお金は次のようなサイクルで動いています。

  1. 資金調達
    銀行からの融資や自己資金で、まずお金を手に入れます。
  2. 投資・費用支出
    そのお金から設備や経費を支出します。
  3. 仕入れ
    仕入先から商品や原材料を購入し、仕入代金を支払います。
  4. 販売
    商品・サービスを販売し、売上代金を回収します。
  5. 再投資
    回収したお金を次の投資や仕入れに回し、サイクルを繰り返します。

この一連の流れがスムーズに回っていれば、会社は安定して運営できます。

しかし、たとえば「商品が売れない」「回収が遅れる」などでこのサイクルが滞ると、必要なときにお金が足りなくなってしまいます。これがいわゆる「資金ショート」の状態です。

キャッシュフロー管理の基本

資金ショートを防ぐため押さえておきたいポイントは実際の「現金の流れ」を正確に把握することです。

1. 利益と現金の動きは違う

  • 利益は帳簿上の数字です。
  • キャッシュフローは実際に動いた現金です。

たとえば、100円で商品仕入れ、代金を支払い、キャッシュレス決済で200円を売上げ、翌月に入金があったとします。

1月に代金回収された時には、100円の利益があり、キャッシュ(現金)も100円増えている状態になりますが、

代金を支払ったあとは、キャッシュがマイナスになっていて、12月に売上がたった後には、「利益がでているのにお金がない」状態になっています。

売上が100億あろうが、利益が1億円出てようが、売掛金が回収できなければ現金はゼロです。設備投資で大きな支出があったときも、すぐに利益は動きませんが現金は大きく減っています。そして、現金が足りないと、支払うべきものが支払えず、次の仕入れができず、倒産します。

だからこそ、現金の流れを見逃さずに早めに対策をとっていくことが重要です。

2. キャッシュフロー計算書の3つの柱

会社のお金の動きは、大きく次の3つに分けられます。

  • 営業活動によるCF
    日々の本業での現金収支(例:売上入金、仕入れ代金、給与など)。
  • 投資活動によるCF
    設備投資や資産の売買による現金の増減(例:機械購入、設備売却など)。
  • 財務活動によるCF
    資金調達や借入金返済による現金の出入り(例:銀行借入、株式発行など)。

まずは、本業で現金がきちんと増えているかをチェックしましょう。

すぐにできる!キャッシュフロー管理の実践法

(1) 資金繰り表を作ろう

資金繰り表は、毎月のお金の出入りを一覧で把握するための単純ですが重要なツールです。収入と支出、そして残高を確認しましょう。最もシンプルな形にすると次の図のようになります。

【例】

ポイント:

  • 3カ月~半年後の表を作成する
  • 売上は計画の金額を基に、取引別の入金時期を見極めて記入する
  • 固定費は一定額として、支払いのタイミングに合わせて記入する。
  • 設備投資や広告宣伝等の支出を計画時期に記入する。

以下の図表は、財務キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、営業キャッシュフローを区分した10日ごとの資金繰りを見る資金繰り表です。

(2) 「入金は早く、支払いは遅く」を心がける

表は作成して完了ではなく、その後も1週間、10日あるいは1ヵ月ごとに情報を更新していくことで、最新の資金繰り状況と見通しを把握することが重要です。作成したらまず、キャッシュフロー(当月の収支)や現金残高をチェックします。合計がマイナスになっている月は注意が必要で、現金残高が1回でもマイナスになっていれば、早めの対策をしなければなりません。普段からできる対策・考え方は以下のとおりです。

  • 売掛金の早期回収:
    請求書は早めに発行し、回収サイトの短縮を目指します。
  • 支払いは可能な限り後ろ倒し:
    支払い条件の交渉で、支払いサイトを延ばすことも検討しましょう。
  • 余剰在庫の削減:
    在庫管理・売上予測の精度をあげて、余剰在庫を減らしましょう。資金繰りだけを考えるなら、理想は受注生産(仕入)です。

【具体例】

  • 請求書の回収サイトを30日から15日に短縮
  • 支払いサイトを30日から60日に延長

【補足】決算書から算出した「回転期間」を重要指標として改善の進み具合を計測する

企業の決算書からは、資金の回転の速さを測るための「回転期間」を計算することができます。これは、キャッシュフロー管理の効率性を客観的に評価するための大切な指標です。ここでは重要な3つの回転期間の算出方法と、それを重要指標として活用・改善する具体策をご紹介します。

1. 回転期間の算出方法

  1. 売上債権回転期間(回収期間)
     - 目的: 売掛金が現金化されるまでの日数を示します。
     - 計算式:売上債権回転期間=売上債権÷年間売上高×365
      たとえば、売上債権が300万円、年間売上高が3,600万円の場合、回転期間は約30日となります。
  2. 在庫回転期間
     - 目的: 在庫が売れて現金化されるまでの日数を示します。
     - 計算式:在庫回転期間=期間平均在庫高÷売上原価×365
      在庫管理がうまくいっていれば、この期間は短くなります。期間平均在庫数量÷総出庫数×365での計算も可能です。
  3. 買掛金回転期間
     - 目的: 仕入先への支払いが完了するまでの日数を示します。
     - 計算式:買掛金回転期間=買掛金÷売上原価×365

さらに、これらを組み合わせた「キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)」を算出します。

  • キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)の計算式:
     CCC=売上債権回転期間+在庫回転期間−買掛金回転期間

このCCCが短いほど、資金の回転が速く、現金化が効率的に進んでいると判断できます。

2. KPIとしての活用と改善策

現状の把握と目標設定:

  • まずは、決算書から算出した各回転期間やCCCの数値を把握し、現状のキャッシュフローの状況を明確にします。
  • その上で、例えば「売上債権回転期間を現在の45日から40日に縮める」や「在庫回転期間を10日短縮する」といった具体的な目標を設定します。

具体的な改善策:

  1. 売上債権回収の迅速化
     - 対策:
      - 請求書の発行を自動化し、発行後すぐに送付する。
      - 顧客との支払い条件を見直し、回収サイトの短縮を交渉する。
     - 効果: 売上債権回転期間の短縮により、キャッシュの早期回収が期待できます。
  2. 在庫管理の効率化
     - 対策:
      - 適正在庫を維持するため、需要予測の精度を向上させる。
      - 売れ残り在庫の早期処分や、無駄な在庫の削減を実施する。
     - 効果: 在庫回転期間が短くなり、不要な現金拘束を減らすことができます。
  3. 買掛金の支払い条件の見直し
     - 対策:
      - 仕入先との交渉で、支払いサイトの延長を試みる。
      - 複数の仕入先との取引で、条件の競争を促す。
     - 効果: 買掛金回転期間を延ばすことで、実質的なキャッシュ保持期間が長くなります。

定期的な評価と改善:

目標数値に届かない場合は、各項目ごとの対策をさらに見直し、改善策を追加・強化していきます。

設定したKPI(売上債権回転期間、在庫回転期間、買掛金回転期間、CCC)を月次または四半期でモニタリングし、数値の推移を確認します。


(3) 固定費の見直しで手元資金を増やす

  • 家賃や定額支払いの見直し
    無駄なコストを削減し、必要な経費だけに絞ります。
  • デジタルツールの活用
    クラウド会計ソフトや資金管理アプリを使うことで、時間の削減=コストの削減で効率化することができ、また、現状を即時に把握できるようになります。

急な資金不足に備えるために

資金繰り管理をすることで前もって手を打っておくことができますが、万一の急な資金不足に備えて資金調達手段を確保しておくことも大切です。

  • 短期借入の活用:
    銀行や公的機関からの運転資金としての借入れ。返済計画はしっかりと立てましょう。業歴と信用を積み重ねたら当座貸越の枠を取りに行ってみましょう。当座貸越とは・・・普通預金残高が不足した場合に、定期預金などを担保に不足額を自動的に借入れできるサービスで、審査はかなり厳しい。
  • 売掛債権の早期現金化:
    ファクタリングなどで、未回収金を早めに現金化する方法もあります。早期に回収できる分、割り引かれることになります。
  • クラウドファンディング・補助金の利用:
    クラウドファンディングや補助金では、追加の資金を確保する手段として活用できます。クラウドファンディングは、掲載準備→掲載(募集)期間→入金という手順で進めますが、準備に1ヵ月、掲載2カ月とすると、お金が入ってくるのは最短で約4か月後となりますので、着手から半年後の入金でスケジュールを組むとよいでしょう。補助金は、一般的に申請→審査→採択・決定→補助期間開始→完了報告→入金となるので、先に投資総額を準備しておかなければなりません。つまり、資金繰り的には負担が大きいということです。また、補助率も2分の1~3分の2であるため、早々に収益をあげるか、十分な資金を確保しておかないと企業の寿命を縮めることになります。いずれも申請をサポートするコンサルに乗せられて分不相応な投資、不必要な投資をしないようよく考えて取り組んでください。

まとめ

資金ショートは、現金の流れが滞ってしまうことで起こります。
「利益は未来のお金、キャッシュは今のお金」
実際に手元にある現金の流れをしっかり把握し、サイクルがスムーズに回るように管理することが、安心経営への第一歩です。

まずは、簡単な資金繰り表を作って、現状の把握から始めてみましょう。
あなたのビジネスを守るために、今日からキャッシュフロー管理に取り組んでみてください。

★次回予告:

第3回「貸借対照表をRPGで解説してみた」
BSって何が書いているの?どのように活用するの?
必ず作っているけど、何者かがよくわからない貸借対照表について解説します!


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