貸借対照表(B/S)をRPG(冒険ゲーム)で解説
貸借対照表(=バランスシート、略してB/S)をRPGに当てはめて解説してみました。
1. 貸借対照表の基本構造
貸借対照表は、企業の財務状態を左右に分けた表です。
英語だとバランスシート(Balance Sheet)となるので、略してB/S(ビーエス)と言います。
バランスには、残高という意味と、左右それぞれの合計が均衡するという意味があります。図にすると次のような形になります。

貸借対照表全体を簡単に説明すると、右でお金をどのように集めてきて、左でお金をどのように使っているかを示す表となります。
- 右側:資金調達の方法
- 上部(負債):銀行や取引先から借りたお金。つまり「返さなければならないお金」です。
- 下部(純資産):オーナー自身が集めた資金や、事業で稼いだ利益。返済義務はなく、自社の力で積み上げた財産です。
- 左側:資金の使い道(資産)
- 現金:今、手元にあるお金。
- 売掛金・受取手形:売上として計上しているが、まだ現金化されていないお金。
- 棚卸資産:販売する商品や製品の在庫。
- 固定資産:長期にわたって使う設備、建物、車両、機械、備品など。
これらを合わせて、貸借対照表は、「決算書を作った時点の資産や借金の状態」を表しています。
2. 冒険ゲームの例で見るBSの動き
ゲームに興味がない方には申し訳ありませんが、冒険もののゲーム(RPG)の世界でB/Sの動きを説明してみます。
冒険開始直後の状態(スタート時のBS)
貯金したお金1,000円と銀行からの借入2,000円で勇者業を始めます。
経営の目的は、地域住民の生活を脅かす魔王の討伐です。

勇者業を開始した時点の貸借対照表は上の図表のようになります。
借入金と資本金でお金を集め、現在はお金のままなので左側には現金3,000円と表示します。
そして冒険を始めます。
冒険初期の投資
- 設備投資:勇者は現金2,500円を使い、武器と防具(固定資産)を購入します。
- 現金残高は、500円
この時点でのBSは、右側は変わらず(1,000+2,000=3,000)、左側は、現金が500、固定資産が2,500となります。

流動と固定とは
ここで、資産の部や負債の部の内訳に、”固定”や”流動”という言葉が出てきています。これらは資産や負債を分類する基準で、現金化のしやすさや支払期限の早さを目安にして区分されています。例外もありますが、大まかな特徴をまとめてみました。
流動資産:近いうちに現金に変わる可能性の高いもの。
固定資産:1年を超えて使用する資産
流動負債:1年以内に支払わなければならない債務
固定負債:支払期限まで1年以上ある債務
冒険中の活動
- 勇者はモンスターを倒し、その成果を換金所に持っていき、売上(現金や売掛金)を得る。
- また、旅の途中で宿屋に泊まったり、回復薬を購入するなど費用(消耗品費や旅費交通費)を支出。
- 仲間を雇っているので、給料も発生。
1ヵ月後の成績を出してみました。
- 売上:1,500円・・・討伐したモンスターを換金済み
- 費用:1,300円・・・人件費、旅費交通費、消耗品費など
- 利益:200円・・・利益=売上ー費用
売上(1,500円)のうち次のお金はまだ受け取っていません。
- 売掛金:300円:1,500円のうち300円が、まだ換金所から振り込まれていない
この時点の貸借対照表を作り、成績は損益計算書に集計します。

200円の利益は出ましたが、回収できていない売上代金があるため、現金500円→400円に減っています。
この後、借入返済を行いました(利息は諸費用に含んでいるものとします)。
- 借入金返済:250円・・・借入元本の一部返済

借入金を250円返済したので、負債が減りましたが、現金250円も減ったため、現金残高は150円となりました。
冒険開始から1ヵ月経った日を決算日とすると、上のような決算書になります。
資産から順にみていくと、この時点の勇者は、現金150円、お金を受け取る権利である売掛金300円、固定資産※として武器防具を2,500円分持っていることになります。資産の合計は、2,950円です。
※ここでは減価償却を省略しています。
減価償却とは・・・固定資産は、長く使用するので、買ったときに費用とせず、いったん固定資産にして、資産ごとに決められた期間に応じた費用を計上していきます。費用は発生しますが、お金の支払いは別(最初に終わっていたり、ローンだったり)なので、お金の代わりに固定資産自体の金額を減らしていくことになります。
続いて、負債は、借入金が当初2,000円だったのが、一部返済で1,750円となりました。
純資産は、資本金の1,000円に、今期の利益200円が加わって、1,200円となり、負債と純資産の合計は2,950円です。資産の合計と一致しています。
この後も冒険は続きますが、バランスシートがどのように変化するかを見てきました。
3. B/Sから何がわかるのか、そして経営にどう活かすのか?
バランスシートからは次のようなことがわかります。
① 現金は十分か?運転資本は回っているか?
- 現金は十分か?
→ この勇者さんのように利益が出ていても、勇者が戦闘後すぐに現金を回収できず、次の戦いのための資金が不足していると、勇者業の存続は難しくなります。 - この勇者の1ヵ月経過時点の現金残高は、150円。1ヵ月の費用は、1,300円でしたが1,300円のうち変動費が売上の40%で600円、売上に関係なく発生する固定費が700円だったとすると、売上ゼロになった場合、お金が1ヵ月もたないということになります。また、借入返済が毎月250円だとすると、こちらも1ヵ月の返済分も残っていません。よって、現金を至急なんとかしないと危険な状態ということになります。
- 改善策:
売掛金の回収方法を見直し、現金化を早める工夫(請求書の即時発行や支払い条件の交渉)を行う。この勇者の場合、すぐに換金所にもっていく。即現金化できるモンスターを狩る。即金対応してくれる換金所を選ぶ。 - この勇者のケースでは、在庫がないが、余剰在庫が増えても、資金の回転が悪くなり、現金を減らすことになる。早く現金化するためには、在庫を売ることと、なるべく在庫をおかないような管理体制を作ることが資金繰りを楽にする。(詳しくは第2回の記事をご覧ください。資金ショートを防ぐためのキャッシュフロー管理の基本と実践法【Excel資金繰り管理表無料配布】)
- 短期の借入や売掛金を割引して買い取ってもらうファクタリング
② 負債と自己資本のバランス
- 自己資本比率が低いと、借入金に依存している状態。
→ 勇者が借金で高価な武器を買いすぎ、返済のプレッシャーに押しつぶされる状態です。 - 自己資本比率は、純資産 ÷ (負債+純資産)の計算式で求めます。
→ 負債+純資産は、資産の合計と同じ金額です。 - 勇者の自己資本比率は、純資産1,200÷総資産2,950 ≒ 24%。創業直後は、30%以上が目安と言われるが、比率よりも①の資金繰りが回ることだけに集中すればよいと思う。
- 純資産がマイナスになっていると、債務超過。外部からの資金調達がかなり難しくなる。
- 改善策:
利益を積み重ねて自己資本を増やす、あるいは利息負担が重い場合は、借換を検討。非効率な資産かつ値段のつくは資産は売却を検討(売却代金を借入の返済に充てる)。非効率というのは、利益を生み出すのに役立っていないということ。費用ばかりかかってマイナスになっている資産も使い方を見直すか処分するかを早めに判断する。
③ 固定資産を有効活用できているか?
- 固定資産回転率を見れば、固定資産がどれだけ売上に貢献しているかを見ることができる。
→ 勇者が購入した武器や防具が、実際に戦闘でどれだけ役立ち、勝利に結びついているかを評価するようなもの。 - 固定資産回転率は、売上高 ÷ 固定資産の計算式で求めます。
- 改善策:
不要な設備のリースへの切り替えや、設備投資のタイミングを見直すことで、無駄な資産の保有を防ぎます。非効率な資産や売却価値の高い資産は売却を検討します。
④ 流動性のチェック
- 流動比率から、短期的な支払い能力を評価します。
→ 勇者がすぐに戦闘に必要な道具を購入できるかどうか、手元資金の余裕度を示す指標です。 - 改善策:
必要な現金を確保するための資金繰り表の見直しや、短期借入の利用を検討する。
ここで紹介した「自己資本比率」や「流動比率」などといった指標は、例えば、50%という結果が出たときに、その数値が良いのか、悪いのかをこの数値だけで判断することができません。では、どう使うかというと、過去の数字や計画の数字、あるいは同業他社・業界平均の数字と比較します。比較すると差が出ます。その差の原因を探り、それが強みだったり、弱みだったり、解決しなければならない問題だったりするので、それを次の目標・計画に織り込んでいく形で使っていきます。
4. まとめ
貸借対照表は、企業の財務状況を「冒険のスタート時」「戦闘中」「決戦直前」というように、その時々の状況を把握するための重要なツールであることをご紹介してきました。貸借対照表の右側にはどのように資金を集めてきたのか、左側にはお金を何に使ったのかが書かれています。
これらの数字をもとに、現状の経営状態をチェックし、対策を講じることができるようになります。
ぜひ貸借対照表の見方を自分のものにし、常に最新の貸借対照表を読み込み続けることで経営の安定や成長につなげてください。
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