ChatGPTを活用した損益分岐点分析
1. はじめに
中小企業の経営者にとって、損益分岐点の把握は利益確保のために重要です。しかし、損益分岐点の計算やシミュレーションは手間がかかり、適切な判断を下すのが難しい場合があります。そこで、本記事ではChatGPTを活用して損益分岐点分析を効率化する方法を解説します。
損益分岐点の活用法について知りたい場合は過去の記事をご覧ください。
2. ChatGPTにどのような指示を出せばよいか?
AI初心者の方でも簡単にChatGPTを活用できるように、具体的な指示文(プロンプト)を紹介します。この記事で使用したAIは、ChatGPT-4o(無料で使用できる)です。
(1) 基本的な分析を依頼する
まずは、次のような指示文と基本データを入力します。「以下のデータを基に、損益分岐点売上高と限界利益率を計算してください。
- 売上高: 1,000,000円
- 変動費: 400,000円
- 固定費: 500,000円」
ChatGPTはこの指示に基づき、限界利益と損益分岐点を計算してくれます。
基本データについては、以下のような図表を貼り付けても解析してくれます。

簡易的な損益分岐点計算シートを無料で配布しています。この記事の最後尾でダウンロードできます。
(2) 価格変更の影響をシミュレーションする
基本データを入れたら、色々なシナリオを想定して、分析してもらいましょう。
「販売単価を10%値上げし、販売数量が10%減少した場合の損益分岐点売上高と営業利益の変化を計算してください。」
この指示を出せば、価格改定がどのように利益に影響するのかを分析できます。
(3) 固定費の変動を考慮したシミュレーション
「固定費が50,000円増加した場合、販売数量が5%増加したときの営業利益と損益分岐点売上高を計算してください。」
このように、変数を指定すれば詳細なシミュレーションを行うことができます。
(4) どの施策が最も効果的か比較する
「以下の施策について、営業利益が最も大きくなるものを比較してください。
- 価格10%値上げ(数量10%減少)
- 販売数量5%増加(固定費+50,000円増加)
- 販売数量10%増加(固定費+100,000円増加)」
ChatGPTはこれに対して各施策の影響を計算し、比較表を作成してくれます。
3. 損益分岐点分析の基本
損益分岐点(Break-even Point, BEP) とは、企業が収益と費用のバランスを取る売上高のことです。
- 売上高 = 固定費 + 変動費 となる売上高
- 営業利益がゼロとなるポイント
計算式
- 限界利益(売上 – 変動費)
- 限界利益率(限界利益 ÷ 売上高)
- 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
<損益分岐点について解説した記事>
4. ChatGPTを活用した分析例
ある企業の基本データは以下の通りです。
項目 | 金額 |
---|---|
売上 | 1,000,000円 |
変動費 | 400,000円 |
固定費 | 500,000円 |
限界利益 | 600,000円 |
限界利益率 | 60% |
損益分岐点売上高 | 833,333円 |
このデータをもとに、ChatGPTを活用して様々なシミュレーションを行いました。
5. シミュレーション結果
いくつかのシナリオでシミュレーションをした結果は次のようになりました。
(1) 価格10%値上げ(数量減少なし)
- 利益増加額: 約 +100,000円
- メリット: 既存の販売数量を維持できるなら、利益率の改善が大きい。
- デメリット: 価格が上がると需要が減少するリスクあり。
(2) 価格10%値上げ(数量10%減)
- 利益増加額: 約 +30,000円
- メリット: 多少の販売減少があっても利益は増加。
- デメリット: さらに販売数量が落ちると利益減少のリスク。
(3) 価格10%値上げ(数量20%減)
- 利益減少額: 約 -40,000円
- メリット: 利益率は改善。
- デメリット: 数量減が大きすぎると赤字のリスク。
(4) 販売数量5%増加(固定費+50,000円)
- 利益増加額: 約 +85,000円
- メリット: 損益分岐点売上を下げつつ、利益を増加できる。
- デメリット: 販促費(固定費)が確実に効果を生むか不確実。
(5) 販売数量10%増加(固定費+100,000円)
- 利益増加額: 約 +150,000円
- メリット: 販売増が確実なら利益最大化の可能性。
- デメリット: 広告・販促費がかかる。
5-2. どの施策が最適か?
どの施策が最適なのかを尋ねると、次のような表を作成してくれました。
施策 | 利益増加額 | リスク | おすすめ度 |
---|---|---|---|
価格10%値上げ(数量維持) | +100,000円 | 需要減少のリスク | ★★★★☆(最も効果大) |
価格10%値上げ(数量10%減) | +30,000円 | 許容範囲の需要減少 | ★★★☆☆(テスト推奨) |
価格10%値上げ(数量20%減) | -40,000円 | 需要減が大きすぎる | ★★☆☆☆(慎重に) |
販売数量5%増加(固定費+50,000円) | +85,000円 | 販売増加の確実性次第 | ★★★★☆(良いがコスト注意) |
販売数量10%増加 | +150,000円 | 広告・販促費がかかる | ★★★★☆(安定的な利益増) |
そのままの結果を載せていますが、広告宣伝を仕掛けて、販売数量を10%増加させるという施策では、広告分の固定費が増加するはずですが、(リスクには書いているが)利益額には反映されていないなど、完璧とは言えない解答ですが、この結果を見て「それならこの場合はどうだろう?」というのが考えやすくなります。
5-3. 結論:最適な施策
短期的に効果が大きいのは「価格10%値上げ」
- ただし、販売数量が 20%以上減少する場合はリスクが高い ので、慎重に検討。
中期的に有効なのは「販売数量増加」
- 5%の販売増でも利益が伸びるため、低コストのプロモーション施策(SNS・口コミ・紹介制度など)を活用すると良い。
5-4. おすすめの戦略
- テスト的に価格10%値上げを試す
- 需要の落ち込みが 10%以内 なら、利益改善が期待できる。
- 価格を調整しつつ、反応を見て慎重に判断。
- 低コストで販売増加を狙う
- 既存顧客向けの割引や紹介制度、SNS活用で 広告費を抑えながら販売を伸ばす。
- 5~10%の増加で十分利益が伸びる。
- 損益分岐点を下げる
- 変動費削減や固定費見直し(リース契約の改善、広告費の最適化)で、リスクを減らす。
6. まとめ・ChatGPTを活用するメリット
✅ 簡単にシミュレーションができる
✅ 施策の影響を数値で比較できる
✅ 土台を作ってくれるので、考えを広げやすい
✅ 戦略立案をスピーディーに行える
今回の分析のように、ChatGPTを活用することで、素早い経営判断が可能になるはずです。
ただし、質問の意図とはズレた回答をすることがあったり、想定の見落としがあったりするので、人が見守りながら、考えながら、軌道修正してあげながら分析を進めていくのがよさそうです。それでも、経営者1人でゼロから考えていくよりはかなり時間を節約できるし、土台があることで、色々とアイデアが出てきやすくなるのではないかと思います。
中小企業の経営者にとって、限られたリソースの中で最適な戦略を選択することは重要です。
ぜひ、自社の経営判断や管理業務にChatGPTなどAIを活用してみてください!
この記事内で使用しているChatGPTに貼付けて使える損益分析シートはこちらからダウンロードできます。無料です。
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